2012年6月25日月曜日

グラン・トリノ





原題:Gran Trino
コピー:「俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。少年は知らなかった、人生の始め方を。」

みんなのレビュー
好意的な意見
  • 単純でセオリー通りな内容だがありがちなメロドラマに陥らず,知性とユーモアと感動のある映画となっている
  • 物語の構成がわかりやすくかつ重厚
  • 物語を通して観客に問題を提起し,疑似体験した観客を考え込ませる力がある映画
  • 切り口が無数にある極めて懐の深い作品
  • 人物の個性やそれにまつわるエピソードがごく自然に際立っている
  • ウォルトとタオの人生の描写の中に人生の終わりと始まりが比喩されていているようだった
  • 無名のキャストながら自然なセリフの応酬が見事
  • 小さな題材の裏に深いテーマ性を感じたが押しつけがましく表現されていないところが良かった
  • 主人公のウォルトそしてイーストウッド自身の戦争体験と罪の意識が伝わってきた
  • 少数民族など孤独な境遇に置かれた人たちへの眼差しからイーストウッドの人間への愛情が感じられた.優しい映画
  • 頑固なウォルトが隣人たちに心を開いていくまでの展開と他人に必要とされる喜びに気づいていく様に心を打たれた
  • シンプルで余分なものがない

評価の低い人の意見

  • 救いのないエンディングが納得できない
  • 悪者(ギャングたち)の社会的背景が描かれておらず,悪や愚者の描かれ方がステレオタイプな感じ
  • 内容が中途半端で人間ドラマとして描き切れていない部分が多い
  • 考えさせられるポイントは多いが全体的に浅い
  • 話がシンプルすぎてふくらみがない
  • 全体的に描写が散漫で説明的
  • 後半の残虐なシーンに耐えられない
  • 無名のキャストの演技が下手
  • イーストウッドが自分をかっこよく見せたいだけの映画にみえる
  • ウォルトの行動が自分勝手な正義感にしたがっているだけで鼻につく


みんなのレビュー[分析]

  • シンプルな物語構成
    • シンプルで無駄がなくわかりやすいが重厚さをもつ
    • 背景やテーマがストレートに伝わってくる
    • ふくらみが無く退屈
  • 様々な問題提起
    • 切り口が無数にあり極めて懐が深い
    • 問題提起が鮮やかで観客を考えさせる力がある
    • 説教くさすぎずエンターテイメントとして充分楽しめる
    • 考えさせられるポイントは多いが,浅い
  • エンディングについて
    • 作品を通して主人公の懺悔が描かれておりその結末として納得のいくラスト
    • 想像を超えるラストで驚いた
    • 予想通りで興ざめした
    • ウォルトが命をかけた相手があまりにも救いようのない者たちだったので残念
    • 英雄気取りにしかみえない
    • アメリカ映画らしい爽快なラストの方がよかった


論 評

 本作は82歳という驚異的な年齢に達したクリント・イーストウッドによる作品である.クリント・イーストウッドはもはやハリウッドの生ける伝説である.2000年代に突入してからは年に1作というペースで映画を製作している.
 クリント・イーストウッドが作る映画からはクリント・イーストウッド色というものはない.題材,脚本,主演といった映画の構成要素をよく考慮しているなぁという印象を受ける.だから,多くの映画監督が持つお得意の俳優(スコセッシでいうデ・ニーロ,ガイ・リッチーでいうジェイソン・ステイサム,ティム・バートンでいうジョニー・デップなど)も持たないのだろう.とことん映画を愛し,映画という作り物にこだわる姿勢は映画を観る側にも伝わってくる.まさに映画監督として非常に完成されていて,それが多くの映画関係者から尊敬される理由ではないだろうか.
 本作はミリオンダラー・ベイビー以降,久しぶりに本人も出演した映画で,改めて見ると,やはりクリント・イーストウッドは俳優なんだなぁという印象を受けた.昔からクールな二枚目の役が多かったのだが,本作では頑固な退役軍人の役ということでクールさよりも堅い感じを押し出した演技だった.クリント・イーストウッドの映画はほぼ必ずアカデミー賞で取り上げられることからも分かるように,キャラクターの関係性と濃密な演技が毎度見事である.本作も例外ではなく,決して派手でないが,人間が織りなすドラマとそれを見事に表現する(イーストウッドの)濃密な演技が冴えていた.
 ただ注意して欲しいのが人によって非常に大きく評価が分かれるだろうとということである.実際にレビューも両極端である.僕としては静かに覚悟を決めたウォルトは最後あれで幸せだったんだろうなぁと思った.価値観はそれぞれだけど,1人の人間として苦悩,楽しみ,愛といった様々な人生の要素を生き抜き,そして最後にその決断が終着駅だと信じる(実際,ウォルトは信じたいだけだったように思える)か如く,大きな決意を下す.こんな男を見事に演じきったイーストウッドは,これを機に俳優業を引退するらしい.もったいない気もするが,確かに最後に相応しいイーストウッドにしかできない役だったのかなと思う.恐らく直感的にイーストウッドも自分にしかできないと思ったのではないだろうか.こういう観点で見るとまた更に濃密さが増すのかもしれない.

当てはまるジャンル -強い要素の順に

ドラマ,サスペンス


この作品に含まれる要素

  • 人間の尊厳
  • ドラマで魅せる
  • 退役軍人の苦悩
  • 人生の締めくくり
  • ヴィンテージカー
  • 人種にまつわる問題
  • 大人になるということ

イラスト


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